ふとしたことからカオルは水泳部のソノコに惚れてしまった。カオルはカナヅチの癖にいきなり水泳部に入部し、オリンピックを目指すと宣言。ソノコに猛烈なアタックを掛けはじめる。
近所の映画館で浅野忠信特集をやった時にこの作品が掛かった。一週間程度のレイトショーで掛かったラインナップはこの作品を皮切りに『Helpless』の試写、『あいつ』『119』『幻の光』というものだったが、僕はその中でこの『バタアシ金魚』だけを見た。ロードショーの時に話題になった記憶はあったのだが、その後何故か全く見るチャンスがなかったのだ。17歳の高岡早紀にも結構期待して見た。そして、面白かった。こりゃイイ。良い映画だ。
色々良い所はあるが、何よりもその勢いがいい。コメディと言うのだろうか、こういう作品は勢いが全てだ。ショーも無い所とか現実味の無いところとか、白ける可能性のあるところ(壁、もしくは穴と呼んでもいい)は至るところに出来てしまう。それをこの勢いで無理矢理飛び越えるのだ。するとそれ自体が痛快爽快な笑いになってしまうのだから不思議。結局詰まらないコメディと言うのはこの勢いを得られなかった、もしくは失速してしまったものなのだと僕は思う。この作品にはそういう勢いがある。「突き抜け」た感じがする。行け行けゴーゴー!
高岡早紀も良かった。こういう青春作品としてはヒロインが何より大事なのだ。全編で彼女が友達と普通に廊下を談笑しながら歩いているロングショットなどが散見されるが、それらがまたすごく自然でよろしい。松岡監督も心得ていると言うべきか、彼女を使ってこの場面ならこう撮ってくれー、と思うその通りをぴしっと幾つもやってくれる。その絵の中で彼女は確かに光っていた。当時17歳だったか、それにしても童顔の彼女だが、その一瞬は美人のヒロインとして映えるのだ。何と言うか、光と愛嬌を全身から振り撒きながらふっ飛びそうなストーリーの中でしゅるしゅると泳いでいた。
原作は少年誌の連載漫画なのだが、幸いなことに僕は原作を全くと言って良い程知らない。タイトルを知っており、その絵柄をかすかに憶えている程度だ。中身は全く読んだことがない。しかし却ってそれが邪魔にならずにこの作品を素直に面白いと思わせたのだろうとも思う。原作は映画とは違う面白さに満ちているため、映画が詰まらなく思えてしまうというのは良くあることだと思うから。
ところでキャストが面白い。高岡早紀と東幹久は今『アパガード』などという歯を白くする製品のCFにコンビで出演して「芸能人は歯が命」などと言っている。思い起こせば高岡早紀を初めて見たのはマドラスという靴のTV CFだったのでは無いだろうか。岡田真澄と一緒に赤いドレスで踊っていた記憶がある。彼女が16歳の頃ではないだろうか。
おっと脱線。とにかく東君はこの作品ではちょっとカッコ良すぎて根性悪いかも知れないという役柄だ。それから高岡早紀の友達役を大寶智子がやっている。彼女は僕の知り合いがビデオで見せてくれた『遥かなる甲子園』で見た。この頃よりちょっと丸くなっている感じだが、今の彼女はまあこんな感じだなあ。僕がこの作品を見るきっかけとなった浅野忠信は敵対高校の水泳部キャプテン役(その名も牛若丸、だそうだ)なのだが、丸坊主でまだまだガキんちょだ。
そして筒井道隆だ。なんともマッスグでキョクタンな主役の少年を好演している。この後彼はTVドラマで好青年の役ばかりが続くので、逆にこう言うアクの強い役は珍しいかも知れない。しかし彼はやはり根っから好青年なのか、このアクを思いきりサラッとやってのけてカラッと厭味がない。それがこの作品の「突き抜け度」に相当貢献していると思うのは僕だけかな。
とにかく重ねて言おう。こりゃイイ。良い映画だ。見るべし。そこのキミもまだ見ていないなら是非見るべし。