Cinema Review

鉄男

監督:塚本 晋也
出演:田口 トモロヲ、藤原 京、石橋 蓮司

鉄に侵食される男

塚本 晋也監督メジャーデビューの頃の小作品。'89。ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ。なんだこのplot紹介は!?と思った貴方。本当にこの映画のplotはこれだけなんだな。ストーリ性なんてなきに等しい展開で、鉄に侵食されるという無茶苦茶な設定にも関わらず、イギリスビデオヒットチャートのトップに登りつめたこともある国際的にも有名な邦画なのだ。製作・監督・脚本・撮影・編集・美術・音楽…ぜーんぶ塚本 晋也。ようするにアマチュア映画ののりで作った映画。製作費が凄く安そうな実験性が強い映画。人間が段々鉄化していく様の美術の迫力と、コマ落しの連続によって醸し出す疾走感が特に秀逸。たぶん、彼がやりたかったのはこの表現だけだったんでしょうな。深読みする必要なし。「人間から鉄が生えたら面白いよね」とか「鉄男が町中を走ったらきっとパニックだよね」とか単純にこれだけで映画を作ったのだと思って間違いないだろう。それ以外は何にもない映画なのだが、とにかく塚本監督の才能の凄さが身に染みて良く分かる映画だ。僕は彼の斬新な表現に目から鱗が落ち、感動しまくった。悪趣味なビデオドラッグの様に展開早く流れる映像を見終った後はきっと貴方も彼の表現の虜になっていることだろう。

Report: Akira Maruyama (1996.08.06)


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