体重当てコンテストの賞品としてハゴット農場にきたベイブ(子ブタ)が、牧羊犬ならぬ牧羊豚になることを夢見るのだが…
まず始めに、私の BABE歴からお話しすることにしよう。ロードショーを3月15日に見に行き、月末には英語版 BABE ビデオを手に入れ、あきずに見ること数十回。どうしても聞き取れない英語があって、気になって眠れないので 7月にキャプションを表示するTV ReaderをInternetで注文し、輸入。
やっと、眠れる。:-)
この映画には、犬、猫、ねずみ、馬、あひる、牛、羊など多くの動物が出ている。動物たちの演技もさることながら、実写そっくりの動く動物映像はすごい。特撮との区別がぜんぜんつかない。あたかも、動物がほんとうに演技しているような錯覚にさえ陥いる。それぞれの動物特有の動きがとってもかわいい。
その中でも渋さを出していたのは、牧羊犬のレックス(フライの夫)である。レックスは牧羊犬のプライドが邪魔をして、ベイブとは距離をあけてしまうのだが、最後にはベイブのひたむきさがレックスの心を開いたのか、自分のプライドを捨ててまで、羊に助けを求めに行く姿はなかなかかっこいい。
全体的にほのぼのとした流れであり、牧場主のハゴットおじさんとの信頼関係や、ベイブの母親がわりの牧羊犬フライとのやりとりがほほえましく素敵である。ベイブのひたむきで純粋な心と、勇姿には、感動の涙を誘うものがある。
ほのぼのとした流れの中で、一方で常に「食肉として生まれた豚の運命」が見えかくれしていて、暗さが漂っている。このように映画で、食用の動物が辿る運命を描いた作品はめずらしいのではないだろうか。ベイブのお母さんが「ブタの天国(屠殺場)」(英語ではパラダイスといっていた)に行くところや、動物を始末するときの刃物類がぶら下がっているのを見たとき、なんともいえない気持になる。人間は残酷だが、生きるためだから仕方がない。
忘れてはならないのは、動物に声をあてている声優さんのすごさである。特に、ベイブに声をあてていた女優さん(Christine Cavanaugh)はすごい。単純な"yes"や、 "I want my Mam." と言って泣くところ、"May I call you Mam?" などの言い回しがすごく上手だ。ベイブの純朴な様子が「声」や「話方(スピードなんか)」からも感じられるのである。また、母性的なおちついた感じのフライ(Mariam Margolyes)やプライド高きレックス(Hugo Weaving)もそれぞれ声の役割は大きい。いい味を出している。
動物が他の動物についてどのように考えているのか、動物たちのコミュニケーションがおもしろい。もちろん、動物に聞く手段はないので、人間が考えたものであろう。
たとえば、羊が「頭が悪いからゆっくりしゃべってくれ」と犬に言うところ(しかし、羊のリーダー的存在のマーは、けっこうペラペラ早口で話していたから、マーは特別なのであろう)。フライが「人間はあひるや鶏など stupid animal しか食べない」などというところ(要するにフライは自分たち犬は stupid animal ではないと思っているわけである)。家の中に入れるのは犬と猫だけだと自覚しているところ(フライはjust the way things areと言っている)。レックスが皆に「各自(それぞれの動物)の proper place をわきまえろ」とお説教しているところなどおもしろい。
これは、眠れなかった原因ハゴットおじさんの最後の台詞である。
"That'll do, pig. That'll do."
(注)BABEは他の動物からはBABEと呼ばれていたが、ハゴットおじさんなど人間からは "PIG"と呼ばれたままであった。