メキシコの貧しい山村に繰り返しやってきては何でも奪い取って行く山賊達。手を焼いた村人達は用心棒を雇って山賊を撃退することにした。
言わずと知れた西部劇版『七人の侍』である。久し振りにビデオで見て、余りにもそっくりコピーなのに驚いてしまった。台詞まで一緒である。これじゃクレジットに黒澤明の名前を入れないわけには行かないだろうと思いきや全然それらしきものが無かったのにもう一度びっくり。
『七人の侍』はキャストは地味だ。三船敏郎を筆頭に黒澤俳優とも言うべき俳優が並んでいた。勿論今となっては多くがBIG NAMEになってしまっているけれど。それに比べてこの作品は豪華キャストだ。皆若くてなかなかカッコ良いじゃないか。チャールズ・ブロンソンなんか結構見られる顔(失礼!)じゃないか。中年になって太り始めてからとは随分印象が違う。スティーブ・マックイーンなんか確かに若いんだけど、他の俳優と比べて今とギャップが小さすぎて逆に笑えたりもする。この人昔からオッサンだったのね。
作品としては僕はしかし圧倒的に黒澤版を推したい。エンタテイメントはこうじゃなきゃいけないというスピード感、娯楽性は黒澤版にこそ詰まっている、いや溢れている。ハリウッド版は僕には少しお気楽すぎて必然性がなくて面白くない。ある意味では黒澤版は日本人受けしているのかも知れない。
黒澤版では農民と山賊の善対悪という単純な図式だけではなくて、それに農民の光と陰の両方を描き込んでいる。侍は善人として描かれるが、しかし戦闘シーンは全く凄絶の一語に尽きるもので、そこにはリアルな殺人者イメージと血の臭いが混じる。二面性とその矛盾を常に映して、当然暗いと言えば暗い。
そこへ行くとハリウッド版はカラッと明るい。バキューンと一発撃ったら相手は倒れるし、血も殆ど流れない。最後にユル・ブリナーがニカッと笑って終ってくれるような(実際はそうでもないが)感じだ。
こりゃ国民性かな?ハリウッドでは『楢山節考』なんかは受けないんだろうなと思ってしまった。確かにカンヌでは受けたけれど。
僕はやっぱり日本人なのねと勝手に思い込んでしまったのでありました。