’91。フランス。レオス・カラックスの第三弾。当時改装工事が始まってロケ不可能だったポンヌフ橋を完全に再現したオープンセットが話題となる。セーヌ川のポンヌフ橋に住む浮浪者アレックス(ドニ・ラバン)はある日、自分の寝床を占領している女を発見する。彼女はミッシェル(ジュリエット・ビノシュ)という盲目になる病に冒されている画学生だった。アレックスは次第に彼女にひかれていくが、彼女はかつての恋人が忘れられない。しかしポンヌフ橋の生活を通して二人は自然とひかれあっていく。が、ある日地下鉄の構内に行方不明だったミッシェルの尋ね人ポスターが。「彼女の病気を完治させる治療法が開発された。帰ってこい。」と。彼女が家に帰り病気が完治すれば自分の元を去ってしまうと考えたアレックスはポスターにかたっぱしから火を付け始めた…。
女優ジュリエット・ビノシュが最も油が乗り切っている時期の映画。あいかわらずカラックス映画の核、ドニ・ラバンの演技ももちろん秀逸。『汚れた血』のビノシュの髪を吹き上げるシーン同様、アレックスの火を吹きながら踊る大道芸のシーンも強烈に印象に残る素晴らしいカット。このシーンに魅了された人も多いだろう。
が、この映画のすごさは天才カラックスの脚本と映像にある。それに加えて以上の素晴らしい演技が加わったものだから、この映画は本当に90年代を代表する名作と言っても過言ではないぐらいに完成度が高い。ちょうど公開の頃僕は大学生だった。ボクラの世代の誰もが名作だと認めていた作品。
冬の雪降るポンヌフ橋で再会する二人。この作品はボクラの世代のおとぎ話だ。
ジュリエット・ビノシュは最後に言う。「パリよさらば」と