全てはユミコが幼い時に、祖母が失踪したことから始まる。生きていることの意味とは、そして死の意味とは、、、、。ユミコとそれを取り巻く人の、生と死の間で揺れ動く心をとらえた作品。
地味で退屈ギリギリの映画だというのに、その存在感やインパクトがこんなにも強い映画は非常に珍しい。
ワンシーンの異常なまでの長さ、俳優の顔さえも満足に見ることが出来ないほどの暗調、そして重苦しいほどの沈黙。それは、分かりやすいテレビ番組や映画に親しみ過ぎていた私達に、説明の言葉ではなく、戸惑いながらも主人公やそれを取り巻く人々の心の動きを手探りで探す適度な「間」を与えてくれる。
カメラの動きがうまく主人公の心の揺れを表現していることはもちろん、それ以上にこの映画の色彩構成に絶句した。今、思い返してみても、色の断片が方々から頭に飛び込んでくる。登場人物が身につけている着衣は、古めかしいものではなく、非常に洗練されている。それが、幻想的な世界に浸りがちな観客をリアリズムの世界に連れ戻してくれるのだ。
計算され尽くした色の構成に監督のセンスを見たような気がした。
とにかく、この映画は邦画の良さを最大限に利用した、ある意味で画期的な作品である。一見の価値あり。