Cinema Review

MEMORIES

監督:大友克洋

廃品回収の宇宙船がSOSを発信する地点に向かうが、そこには巨大な廃墟が。他2編。

3つのエピソードを含む全編で2時間のSFアニメーションだ。各編とも独立しており、スタッフも違う。製作総指揮が大友克洋だ。僕はこの名前のために見に行ったようなものだ。

各エピソードのスタッフを先に並べておこう。

Episode 1 『彼女の想いで』'MAGNETIC ROSE'、監督/森本晃司、音楽/菅野よう子、原作/大友克洋、脚本/今 敏、監督・脚本/森本晃司。
Episode 2 『最臭兵器』 'STINK BOMB'、監督/岡村天斉、音楽/三宅 純、原案・脚本・オリジナルキャラクター原案/大友克洋、監督・絵コンテ/岡村天斉。
Episode 3 『大砲の街』 'CANNON FODDER'、監督/大友克洋、音楽/長島寛幸、原案・脚本・監督・絵コンテ・美術監督・オリジナルキャラクター原案/大友克洋。
これにオープニングとエンディングの音楽が石野卓球とある。

大友克洋久々のアニメーション作品とあって、鳴り物入りとも言えるくらいの宣伝であった。この前と言えば『AKIRA』か?しかし見てこれはがっかりだった。特に何と言うことのない作品だったと僕は思う。僕は最初の作品『彼女の想いで』については数年前に出た同名の短編作品集で原作を見ていた。この作品もそうインパクトのあるものではなかったが、それでも何故か印象に残って僕はずっと覚えていた。だから『MEMORIES』という映画が出ると聞いて「ああ、あれか」と想ったのだ。今原作を読み返してみたがやはりそれ程面白い作品ではない。後書きに大友克洋本人がもう少し話を膨らませてもよかったかなと言っている。いずれにしても僕は余り期待していなかった。それよりも大友克洋が直接監督した『大砲の街』に期待を掛けた。全編をワンカットで処理したと言うのも面白そうだった。
ところがどっこい。全編ワンカットとはとても言えないし、何より僕には同様のトライを行っている他の作品、例えば『美女と野獣』やスピルバーグの『トワイライト・ゾーン』の爆撃機のエピソードのオープニングの長回しの方が良い。前者はとにかく全く無理がなく流れるようでそして美しい。ワンカットにした甲斐がある。後者は実写で二十数分間回すという偉業(一体どうやってカメラを運んだのだ?)だ。
そう言う手法的な所も今一つだったが、作品としても救いがなく、暗い。悪くはないが好きにはならなかった。

僕はこの作品では何より音楽が気になった。面白い音楽だ。知り合いに聞いたら音楽の4人の担当のうち二人は知っていた。エンディングが僕は特に気に入った。果たしてエンディングにふさわしいかどうかと言う選曲の問題はありそうだが、、、

僕は大友克洋が噛んだ映画としてはまだ『幻魔大戦』の方が良かったと思う。まあ大して噛んでなかったけれど。そして大友作品の中で是非映画化して欲しいと心から願っているのは、やはり『童夢』だ。『AKIRA』より遥かに良い作品だと僕は思う。僕の大友ランクのベストワンなのだ。(誰もそんな事聞いていないって?)

Report: Yutaka Yasuda (1996.02.05)


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