殺伐とした近未来で、暴力を日常として生きる男を描く。
『雨に唄えば』を聞くたびにアレックスが老人や婦女をなぐるけるの大暴行シーンが頭によぎってしまいます。なぜこの暴力シーンに『雨に唄えば』なのかは、2001年のモノリスよりも難解かも知れません。しかし、雨を楽しむジーン・ケリーと暴力を楽しむアレックスは同じ心境といえるでしょう。
アレックスは左目につけまつげ、ミルクバーでたむろし、CD(この映画にはもうすでに登場していました)でベートーベンを聞くという特異なキャラクター。『カリギュラ』にも登場したマルコム・マクドゥエルが、熱演しています。
退廃した未来社会を暴力で統治してきた、そのアレックスが仲間に裏切られ、大洗脳の刑にあってしまいます。暴力シーンを見ると吐き気をもよおすという洗脳をうけ、三度の飯よりも好きな暴力が大嫌いになってしまうアレックス。大好きな暴力をしようとすると「オエッオエッ」状態です。しかし、映画を見ているうちに、アレックスよりも彼を取り巻くまわりのやつらの方が最低なのがだんだん見えてきます。マスコミを気にした政治家、弱者になった人間の立場などが、アレックスの人格を通じて社会の構造を見せてくれます。
もう一度、映画館で見たい映画です。
必見です。