アメリカに初めてイギリス人が渡った18世紀末、英国人ジョン・スミスと先住民族の族長の娘ポカホンタスが出会い、恋に落ちる。
ディズニー長編アニメーションでは初めて史実に基づいた作品。このポカホンタスは実在の人物で、波乱の人生を歩みアメリカのスタートに大きな影響を与えたそうだ。彼女が居なければアメリカはフランス語かスペイン語の国になっていたかも知れなかった(つまり英国船の上陸は失敗し、フランスかスペインが最初の上陸を果たしていただろうと言うこと?)とパンフレットには書いてあった。
この作品は今までのディズニーアニメーションとかなり趣が違う。大人の香りがするのだ。ともすれば子供向けの色が濃かったディズニーの一連の作品であるが、この作品は一味違う。特に僕は全体の色調が気に入った。ディズニーのアニメーションは大抵の場合明るい、原色を多用した色調だった。例えば『美女と野獣』『アラジン』を見よ。(『101匹ワンちゃん』は違った。英国調とでも言うべき茶系の画面だったな。)しかしこの作品はアースカラーとでも言うのか、赤紫や青紫色の中間色が全体を支配している。これは大地と共に生きる先住民族の娘、ポカホンタスのイメージに合わせたものだと思われる。
全体のキャラクターの動きも少し今までと違うイメージだ。特にポカホンタスのきびきびとしたカドのある動きが面白い。はつらつとした感じがして良い。相変わらず注目しているオープニングもなかなか良かった。
ところで普通ディズニーのアニメーションでは声優は台詞と歌では別人がやっている場合が多かった。今回も例によってポカホンタスの歌はジュディ・キューンという歌手がやっている。しかしジョン・スミスの声はなんとメル・ギブソンであり、そして歌も彼が歌っている。さすがに歌手ではないので他のオペラ歌手が歌うようには行かないが、充分説得力のあるものになっていて違和感はない。
物語の主題は西洋合理主義的自然破壊開発代表である英国人ジョン・スミスと、自然共生主義代表である先住民族ポカホンタスの出会いを通して、西洋人に対して自然を学べ、共生せよ、心の余裕を持てと説いている。しかし東洋人である僕から見てみたら、これは如何にもステレオタイプな描き方でちょっと御粗末に見える。例えばポカホンタスが歌う「風の色で絵が描けるか」と言う問いは西洋人には新鮮なのかも知れないが元々アニミズムの思想が身近な日本人には比較的自然な問いだと思う。『風の谷のナウシカ』ではないが、「風の神様」「山の神様」「水の神様」などという言葉に馴染んでいるから、「風の心を感じなさい」というポカホンタスの言葉も極く自然だ。逆に西洋人がどういう感じで聞いているのか興味が湧く。