『スター・ウォーズ』や『007』シリーズなどSFとアクションにはまっていた私がこの映画を見たのは短大生の時だった。祇園会館でアルバイトをしていたので、京都の映画館には無料で行ける(フリーパスのカードを借りられたのです)のを良いことに、映画に行きまくっていた。アルバイトの先輩の「すごく良かったよ、祇園会館もああいう映画をすれば良いのに」と言う言葉を聞いて今はなき大宮の映画館へ行った。
思えばあの当時の私は恋愛映画が退屈で大嫌いだったので、良く見る気になったと思う。でも、お蔭で恋愛映画もヨーロッパ映画にも興味を持った。
ストーリーはイギリスの良家の娘ルーシーが従兄とイタリアへ旅行し、”眺めのいい部屋”を譲ってくれた親子と出会う。その息子ジョージからの突然のキスを受け、ルーシーはイギリスへ連れ戻される。育ちの良いシシルと婚約するが、ジョージと再会し、彼への愛に気づいて結ばれ、”眺めのいい部屋”へ二人で行く。
この映画は、とにかく美しかった。いつも見ていたアメリカ映画とは全く違っていた。オープニングからキリ・テ・カナワの素晴らしいソプラノが流れ、”眺めのいい部屋”からのフィレンチェの景色、アルノ河の流れ、衣装が、音楽が、次々と私を魅了してしまった。
出演者も脇役の人達まで皆、素敵だった。特に私はジョージの父親のデンホルム・エリオット(レイダースシリーズに出てます)の自然のままの役が大好き。
好きと言えば、イタリアの青い青い麦畑の中でジョージガルーシーに突然のキスをする場面、キリ・テ・カナワの歌うオペラだけが流れ、最高に好きな場面。私はこういうちょっと強引な人の出てくる映画に引かれてしまう。
最初はただのお嬢さんだったルーシーが、異性と出会い、イギリスでの婚約、ジョージとの再会、婚約解消と歩んだものが”眺めのいい部屋”を手に入れる為の道だと何かで読んだ。確かに今でこそ女性が選ぶ時代だけど、この時代ではこんな女性は珍しいのだと思う。
私も自分の”眺めのいい部屋”を捜して、日々を過ごしているのかも知れない。
この後『モーリス』や『ハワーズ・エンド』などアイヴォリィ作品を見たけど、やはり『眺めのいい部屋』が一番、というわけで、うっとりしたくなったらこの映画を見てしまうのです。