小樽を舞台に叙情的に中年男の心情を描いている。男の青春時代からの心の闇を少女が案内するように解き明かして行く。
石田ひかりが自然に奇妙な少女を演じていて、何よりも僕はここが気に入っている。
ある種のきらめきを感じてしまう。石田ひかり演じる少女は少し奇妙で、子供のようで、おんなのような「揺れ」を感じさせる。これと大林監督のあざとさがきわどいとろで平衡しているようだ。そしてとにかく映像が美しい。全編に流れる久石譲の音楽もこれまた良い。少女と映像、音楽、これらと舞台である春の小樽のすがすがしさが一体になってある種の透明感が漂っている。
少女は常に男に付き沿うように、もしくは受け入れながら導くようにして男の心を開かせて行くのだけれど、これが僕には脅迫的に感じられ、まるで僕の心を開けさせられてしまいそうな感じを受ける。
大林監督の作品としては一番に良いと思う。誰にでも自信をもって薦められる一本だ。
この映画は劇場では見ず、公開からかなり経ってからテレビ放映で見た。見てすぐに気に入って、3時間近い長編にも拘らずじーっと集中して見てしまった。余りにも気に入ってしまったので思わず安くなったビデオを買ってしまった。ビデオはビスタサイズで収録されており、テレビ放映よりも画面に広がりがあって良い。